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【デジタル庁創設で学校は…?】教育デジタル化では「課題」より「目的」を考えるべき

第45回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■デジタル教科書についての指針

 一方で、「デジタル化」の動きは加速している。今年7月7日に開催した有識者による「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」の初会合で、文科省はデジタル教科書導入に向けたスケジュール案を示している。
 それによれば、2024年度の小学校の改定教科書の使用開始に合わせて本格導入する方針を固めている。
 そのデジタル教科書は、必ずしもオンライン授業が前提にされているわけではない。教員が教室前面に置かれたディスプレイなどに表示して使用する指導者用と、子どもたちが自分のパソコンやタブレットなどの端末で使用する学習者用の2種類があるという。
 子どもたちにしてみれば、これまでの紙の教科書が端末に表示される教科書になっただけ、と言えなくもない。

 ちなみに、現在もデジタル教科書は存在している。
 文科省の調査によれば小学校の学習者用デジタル教科書は、2019年度で紙の教科書の20%、2020年度には94%が利用可能な状況になっているという。デジタル教科書を使おうと思えば、使える状況にあるのだ。
 しかし、公立小学校で学習者用デジタル教科書を導入している自治体は2019年度で6.1%、2020年度でも14.7%にとどまっている。利用できるにもかかわらず、利用されていないのが実態なのだ。

 デジタル教科書を使うための1人1台端末が整っていなかったことが理由ともいえる。紙の教科書は無償だが、デジタル教科書は無償給付の対象外で、1教科につき200~2000円の費用が必要だったことも大きい。
 それでもデジタル教科書が紙の教科書よりも「優れている」としたら、導入する自治体は急速に増えたのではないだろうか。デジタル教科書を使うために、1人1台端末の導入に積極的に取り組む自治体が増えてもおかしくなかったはずである。
 デジタル教科書の導入が進んでいないのは、まだ紙の教科書に比べてのメリットがはっきりしていないからではないのだろうか。

■教員への無茶ぶりだけでは状況は好転しない

 教科書をはじめ、デジタルを教育に導入する必要性とメリットが明らかにされ、それからデジタル教科書の導入が促進され、それを使うために1人1台端末も必要になる。そういう流れが自然である。

 しかし現状は、1人1台端末をはじめとする環境整備が最初にあり、それに見合うデジタル教科書の論議が始まり、どんなデジタル化が必要なのかは先送りになってしまっている。
 それにもかかわらず、デジタル改革関係閣僚会議の初会合では「ノウハウ不足」が指摘されているのだ。これでは、目的や目標が明確に示されない中で、ノウハウだけが求められていることになる。

 それに応えなければならないのは、学校現場だ。これを「無茶振り」と言わず、なんと表現すればいいのだろうか。「いつものことだ」という声が学校現場からは上がってきそうだが、それが子どもたちのための教育デジタル化になるのだろうか。それとも、ただ政権の点数稼ぎの手段にされてしまうだけのことなのだろうか。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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